ローテーションでダニ対策

発生すると厄介なダニにローテーション散布

ダニは卵から成虫までのサイクルが早く、減少させるのが困難かつ、抵抗性を持たれやすい防除困難な害虫です。薬剤抵抗性の発達を防ぐためには、異なる系統の農薬を数種類選び、ローテーションで使うのがポイントです。(すでに多くの薬剤に感受性が低下しているので、薬剤の選定には注意してください。

薬剤の種類によって、成虫、幼若虫、卵の全ステージに活性のあるものや、おのおののステージに特異的に活性が高いもの等、たくさんの薬剤があります。すべての薬剤を紹介することは出来ませんが、選択肢が一つでも増えれば防除に役立つはずです。

 【抵抗性の発達をおくらせるためには】

  • 薬剤のローテーション防除。
  • 低密度のうちに防除をおこなうことで農薬の使用回数を減らすこと。
  • 化学農薬だけでなくさまざまな耕種的防除も組み合わせて防除すること。

ハダニ類の特長と対策

主に野菜に寄生するハダニの種類として、「ナミハダニ」と「カンザワハダニ」があります。

ナスの葉裏 ナミハダニ卵と成虫
トウモロコシ カンザワハダニ

「ナミハダニ」・・・黄緑型と赤色型が存在します。黄緑型は休眠期になると淡橙色の黒紋のない色に変化し越冬しますが、赤色型は冬期間も休眠することなく活動を続けます。

「カンザワハダニ」・・・休眠性をもつため越冬します。

【ハダニの生態】

  • 成虫:寿命が2~4週間で雌1匹が1日で卵を産む個数は数個~10個、雌1匹が産む産卵数は100~150個ともいわれています。
  • :25℃の環境下で、約10日間かけて卵から成虫に生長します。
  • 幼虫〜第1若虫〜第2若虫:脱皮を繰り返し、1週間前後で成虫になる。

2週間程度で1世代まわってしまいます。繁殖力が強く急激に増加するのでものすごく厄介な害虫です。

【ポイント】

  • 短期間に高密度となるので、発生初期の防除が重要であること。
  • 抵抗性の発達しやすい害虫であるため、同一薬剤の使用は年1回とする。なお、IRACコードで同じグループに属する薬剤があるので注意すること。
  • ハダニ類の特定の成育ステージ(卵・幼虫など)に効果を示す薬剤があるので、特性を把握したうえで、薬剤を選択すること。
  • 収穫後の残渣処理を徹底する。夏場のハウス栽培では1週間ほど密閉して太陽熱によってハダニ類を死滅させてから残渣処理をするとよいです。
  • 薬剤散布の際は、圃場における殺虫効果を確認しながら、安定した効果を示す薬剤を選択して使用すること。(効果が弱かった場合は抵抗を持たれている場合がありますので注意すること。)

作物につくダニの種類と対策

【ダニの種類によって被害箇所が異なる】

ハダニ・・・葉の活性が大きく損なわれて生育不良となり収量・品質が低下する。

ホコリダニ・・・芽や芯葉が加害されて、生育が著しく悪くなり、作物によっては品質が著しく低下する。

ネダニ・・・根の活性が大きく低下し、生育抑制が起こり、収量が低下する。

ケナガコナダニ・・・新芽部分に侵入し食害する。葉が縮れ、芯止まりとなり生育が抑制される。

サビダニ・・・葉、茎、果実が加害され、下部から徐々に上部へと広がる。株が枯死することもある。

【防除方法】

  • 殺ダニ剤のほとんどは浸透移行性や浸達性を有していないので、本圃で葉が繁茂するようになると葉裏などに生息するダニに薬剤がかかりにくくなります。伸び広がりのある展着剤を使用して掛けムラがないように散布することを心掛けてください。
  • 密度が増加してからでは困難になるため、発生の初期に徹底して葉裏まで防除することが重要です。発生してしまった場合は、間隔をあまり空けずに連続散布して防除しましょう。何回も散布に入れない場合は、ダニ剤の混用も効果的です。
  • 被害がでてしまったら下葉つみ、整枝、剪定で被害を除去してください。また、下葉かき等の残渣は残さないなどの対策でダニを増やさないようにします。圃場に残渣置きっぱなしはあまり対策になってないです。
  • ほ場周辺の雑草が発生源となるので、除草を徹底してください。
    • 敷きわらをした場合、わらにダニが付いてくる場合があるので敷きわらした時は早めにダニ防除をすること。作物にだけ防除するのではなく、敷きわらにもしっかり散布することがポイントです。
  • ホコリダニなど施設の床土から発生するダニの場合は、太陽熱衝動など床土や施設全体の消毒を行うと効果的です。
  • ネダニは、土中の被害残渣からも発生するので、できるだけ残渣を取り除いてください。
    • 分解ヘルパーなどの残渣分解資材を使用すると分解が早まります。
  • 天敵を活用して防除するのも一手です。ハダニの天敵に「ミヤコカブリダニ」・「スワルスキーカブリダニ」・「チリカブリダニ」がいます。天敵はダニが増殖する前に作物に定着させる必要があります。天敵は、すぐに入荷しないので事前に予定し注文してください。
  • 発生してしまった場合は、間隔をあまり空けずに連続散布して防除しましょう。何回も散布に入れない場合は、ダニ剤の混用も効果的です。

ハダニ類の抵抗性発達を回避するためには、同じ系統の薬剤は年1回の使用とし、系統の異なる薬剤のローテーション防除をすることが大切です。
できるだけ同系統の年1回の使用を徹底し、各剤の特徴(効果、残効性、スペクトラム等)を生かして上手に使う必要があります。定期的に、「サフオイル乳剤」や「サンクリスタル」などの気門封鎖剤を使用することで抵抗を持たれなくすることも重要です。また、薬剤だけに頼らない防除を実践するためには、各種天敵を活用することも有効です。

IRACコードを活用しよう

「ハダニ」に登録のあるダニ剤をピックアップしてみました。

(作物登録をよく確認してから使用して下さい。)

※基礎活性の「効果発現」、「殺卵効果」、「殺幼虫」、「殺成虫」、「残効」は各メーカーの表示と違うかもしれませんがイメージとして参考にしていただければ幸いです。

令和4年7月作成

※① 卵及び幼若虫に対する効果が高いので、成虫の密度が低い時期に散布すると効果的です。成虫が産んだ卵は孵化しないため、優れた残効性を示します。

※② 本剤は成虫を直接殺す作用がないので、幼虫主体の時期に散布するのが望ましいです。また、その場合薬剤散布後も幼虫は直ちに死亡せず死亡までに3~7日を要する。成虫の防除を必要とする場合には、成虫に有効な薬剤と組み合わせて使用する。

※③ 卵に対しての殺卵効果はないものの成虫が産む卵の孵化抑制効果があります。

注意:天敵への影響で「―」が付いている場合も天敵を使用する場合は1度確認してから使用して下さい。

まとめ

  • ダニが発生しているのか、作物の状態をよくみて早期に対応してください。(葉のすれ、クモの巣みたいな糸があればダニです。)
  • 発生状況に応じて、薬剤を選んでください。基本的には殺卵・殺幼虫・殺成虫に効果があるのが好ましいですが、ローテーションしていくには作用点の異なる薬剤を使うのがポイントになります。
  • 気門封鎖剤を上手に使用することで抵抗性を持たれにくくすることができます。ただし、残効は短いので次回の散布期間をあまり空けないで連続散布するとより効果的です。ムラなくよく掛けることを心掛けてください。

ローテーションについて今までに書いた記事があります。参考までに閲覧してみてください。

『RACコード』でローテーション防除(殺虫剤)

『RACコード』でローテーション防除(殺菌剤)

『RACコード』でローテーション防除(除草剤)

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