薬剤の特長を活かしてアブラムシのローテーション散布
いつの間にか発生している厄介なアブラムシ。アブラムシが多発生すると排泄物にすすが発生して商品価値を低下させたり、有翅成虫は各種のウイルスを媒介してウイルス病を発生させることがあるので早めの対応が必要になります。

早めの対応をしていても同じ薬剤(同じ系統)を連投していると生き残ったアブラムシが薬剤抵抗を持ってしまい効かなくなってしまいます。そうならないためにも、系統の違う農薬をローテーション散布して抵抗を持たれずしっかり効かせるように心掛けましょう。
【害虫の薬剤抵抗性とは】
同じ系統の農薬を使い続けるとやがてその農薬が効かなくなる現象のことです。
抵抗性が発達する原因は害虫が強い毒性に慣れるというものではありません。害虫の遺伝子は人間と同じように個体によってばらつきがあり、遺伝的にある薬剤が効きにくい個体(抵抗性個体)がわずかに存在します。そこに同じ効き方をする農薬(同じ系統)を繰り返し使用すると、その農薬に抵抗性を持つ個体だけが生き残り、集団のなかの多くを占めるようになります。こうして集団的に薬剤抵抗性が発達してしまうと、今まで有効だった農薬が効かなくなることになります。
商品名が違っても中身の有効成分は同じであったり、別の有効成分であっても同じ作用性を持つ薬剤であったりするので、系統をしっかり確認して適切な薬剤選択を行ってください。


一般的なアブラムシ剤の特長

遅効性薬剤ではあるものの導管、篩管の2方向の移行性が特徴的で残効に優れます。脂質の生合成を阻害することで害虫の生育を阻害し、幼虫ステージの活性が高く、成虫には産卵抑制が期待できる

アドマイヤーフロアブル(IRACコード:4A)
浸達性、浸透移行性、速効性など機能性に優れています。 ※ネオニコ系抵抗性のアブラムシが発生しているので注意。すべてに効かないわけではないので状況に応じて上手に使用して下さい。
IRACコードを活用
一般的にアブラムシの専門剤として使われているのは、速効性のアドマイヤーフロアブル(IRACコード:4A)やトランスファオームフロアブル(IRACコード:4C)、忌避効果が期待できるアディオン乳剤(IRACコード:3A)、吸汁阻害は速効的だが餓死するまでに時間がかかるウララDF(IRACコード:29)やコルト顆粒水和剤(IRACコード:9B)、成虫には効果が弱いが幼虫と卵に効果的なモベントフロアブル(IRACコード:23)などがあります。
IRACコード | サブグループ | 主な農薬 |
3A | ピレスロイド系 ピレトリン系(合ピレ) | アグロスリン、アディオン 等 |
4A | ネオニコチノイド系 | アクタラ、アドマイヤー、 アルバリン、ダントツ、 ベストガード、モスピラン 等 |
4C | スルホキシミン系 | トランスフォーム 等 |
9B | ピリジンアゾメチン誘導体(IBR) | チェス、コルト |
23 | テトロン酸およびテトラミン酸誘導体(IGR) | モベント 等 |
29 | フロニカミド | ウララ |
※RACコードが同じでもアブラムシに効果が見込めない薬剤もありますので、使用する際はラベルをチェックしてから使うようにしてください。
例:ジアミド系(28)ジュリボフロアブル、ベリマークSC等はアブラムシに効果が見込めるが、フェニックスやプレバソンには効果が見込めないので注意です。
使用例(葉物を例にしています)

※作物によっては登録がないものもありますので、使用する際には確認してください。あくまでも使用例として捉えてください。これが全てではないです。
※最後に散布する薬剤は収穫前日数をよく確認の上、使用して下さい。
灌注処理をする場合は、ベリマークSC(28)、ジュリボフロアブル(28)、ヨーバル(28)とジアミド系の薬剤が多いので、次に使うのはRACコード:28 以外のものを使うようにします。
定植時にアクタラ粒剤(4A)やダントツ粒剤(4A)もしくはミネクトデュオ(28、4A)を使用したのであれば、1回目の散布を同じ系統の4Aの薬剤ではなく、アブラムシの出始めであれば浸透移行性のあるモベントフロアブル(23)や残効性や耐雨性に優れているウララDF(29)を使うなど系統の違うものを選ぶようにしてください。
アブラムシの発生があまり見られないのであれば、ランネートDF(1A)やパダン(14)、リーフガード(14)やベネビア(28)、ヨーバル(28)等のアブラムシにも効果がある薬剤を使用するのもローテーション散布をする上では有効です。
作物にアブラムシが付いてしまうとなかなか落ちないのがアブラムシです。同じ系統の薬剤を連続して使わないようにRACコードを確認しながら工夫してみてください。
今までに書いた記事があります。参考までに閲覧してみてください。
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